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現在の経済は冷え込みが相当に厳しいものとなることは避けられないだろう。 欧州委員会の経済見通しも、かつてなく厳しい数値が並んでいる。
二○○九年の実質経済成長率に関する予測数値は、ユーロ圏全体として前年比○・一%、独・仏・伊の主要三カ国がいずれもゼロ成長となっている。 住宅バブル崩壊への対応でおおわらわのスペインについては、○・二%のマイナス成長が見込まれている。
経済通貨統合がもたらす負の連鎖作用をみせつけられて、為替市場もユーロから腰が引けた。 さしあたりは金融恐慌の発信源通貨であるドルからの退避通貨としてさえ、機能していない。
単一通貨圏であるがゆえに、傷口が広がる。 今回の危機がユーロ圏のこの弱点を顕在化させた。
その意味でも、危機の色濃いユーロ圏である。 ユーロ圏外のEU諸国についても、イギリス経済が一六年振りの不況入り必至とみられている。
一六年前といえば、一九九三年である。 その前年、一九九二年の二月にエリザベス女王が在位四○周年記念式典で「不幸の一年」という言葉を使った。
イギリスの詩人ジョン・ドライデンの「歓喜の一年」をもじって、一九九二年を回顧したのである。 結果的に一九九三年は、さらに経済的不幸さが深まることになった。
一六年の時を経て、再びイギリスに到来することとなりそうな様相である。 イギリスの場合には、何とか乗り切って以来、ほぼ一貫して住宅バブルに依存した右肩上がりの景気展開が続いてきた。

住宅バブル依存であると同時に、ロンドン一極集中型の成長経路であった。 住宅投資に本格的に火がついたのは一九九○年代後半以降のことである。
ポンド安に牽引された輸出の伸びで経済が上向き始めると、それに伴って雇用も伸びて住宅需要も伸び始める。 ポンド安でロンドンにオイルマネーやロシアマネーなどが流れ込むようになると、それがさらに投機的な住宅需要を煽ることとなる。
世界的なカネ余りの進展がさらにこの傾向に拍車をかけた。 この住宅バブルが終駕してしまえば、イギリス経済には端的にいってほぼ何も残らない状況である。
住宅バブルに支えられた消費ブームがこのところの主要な牽引材料だった。 この構図が崩れた今、一六年振りの不況入りは確かに避け難いところだろう。
欧州委員会の見通しでも、二○○九年のイギリス経済はマイナス一%の後退が想定されている。 この程度の落ち込みで済めば、むしろ良い方である。
円高と日本経済の脆弱さ日本経済も、やはり二期連続のマイナス成長となり、急速に景気冷え込み感が広がっている。 内定取り消しにうろたえる学生たち。
契約打ち切りに呆然とする派遣従業員たち。 収益激減に唇を噛む企業経営者たち。

息を呑む光景が、日々、メディア映像を埋め尽くす。 日本の場合には、二○○二年以来の世界的なカネ余りブームに乗って、もっぱら外需依存の景気拡大が続いて来た。
いわゆる「いざなぎ越え」の景気拡大最長記録が喧伝されて来たが、これももっぱら外需頼みで、実をいえば極めて足腰の弱い景気拡大だった。 むしろ、その間に格差問題が出現し、成長過程に参画することが出来る人々の割合が極めて限定される形の拡大過程となっていた。
外需の強さでそうした弱さを補って来たというのが、この間の成長構図の実情であった。 グローバル恐慌の到来で、この構図が継続不能に陥った。
となれば、格差経済の弱みがこれから本格的に顕在化していくことになる。 前途は厳しいといわざるを得ない。
日本の場合、グローバル恐慌の衝撃は主に円高と株安を通じて波及してきた。 円高の主因は二つある。
第一にドル離れであり、第二に円キャリートレードの巻き戻しである。 むろん、両者は無縁ではない。
アメリカ発の金融激震がドル離れをもたらすのは当然だ。 誰もがドル資産を持つことに対する不安感を強めている。
大手金融機関が相次いでつぶれたり、公的管理下に入るような展開になれば、それが通貨不信につながるのは無理もない。 それに加えて、公的支援による財政収支の悪化が未曽有のスケールになりそうだとなれば、国家破産の懸念さえ出て来る。

そのような通貨を誰もが手放したくなるのは当然だ。 その時の逃げ込み先として、資産大国日本の円が選ばれることに不思議はない。
円キャリートレードの巻き戻しは、第一に低金利の日本を脱出したジャパンマネーの里帰りである。 経営難に陥る金融機関があちこちで続出するような状況の中では、海外に資産を置いておくことについて誰もが不安を抱くようになる。
外貨預金は解約し、その他の外貨資産も円に換金して手元に引き上げたくなるのは当然だ。 こうして、外貨建て資産の円転換が進む。
低金利の日本で調達した円資金を外貨転換して運用していた外国人投資家の場合には、外貨資産の価値が大きく低下して、円資金の返済難に陥ることが恐ろしい。 したがって、早めに円転換を進めておこうということになる。
ドル離れと外貨建て資産の円回帰。 この二つの要因によって、円ドル相場は二○○八年一○月以降、九○円台をつける展開で推移してきた。
今回のような金融激震の局面で、資金が円に集中するという動きをみると、そこには、やはり円の「隠れ基軸通貨」的特性が表れているように思える。 外貨に形を変えて世界に広がった円資金が、円の姿を取り戻して日本に回帰する。
前にみたように、そもそもキャリートレードに乗った円の世界的な拡散がサブプライム・ローン証券化問題などの遠因だったのであるとすれば、今、我々が目の当たりにしている円の国内回帰は、グローバル恐慌の今後の展開と収束過程にどのような影響を及ぼすことになるのか。 にわかには解答がみえないが、注目されるところでいずれにせよ、このように急激な円高は日本経済にとって吸収することが誠に厳しいマイナス要因である。
これで外需頼みの成長持続には完全に赤信号がともった。 そもそも、世界的な需要そのものが落ち込む見込みのところに、この円高による価格競争力の低下が加われば、外需依存型の成長シナリオにもはや現実味は全くない。
株安は多分に円高の結果でもある。 外需依存型シナリオが崩れること、そして大手輸出企業が窮地に立たされるという展望が資金の株離れを促した。
だが、それだけではない。 今の日本の株式市場には、売りが先行する局面で逆に買い向かう役割を果たせる投資家が存在しない。

誰もが一斉に売りに向かうしかない構造になってしまっているのである。 円高の場合と同様に、株安に拍車がかかったのも一○月からのことである。
一○月二四日には、日経平均株価が七六四九・○八円まで下がる場面もみられた。 二○○三年四月につけたバブル崩壊後の最安値、七六○七・八八円に迫る低相場である。
このような展開になるについては、まず第一に、外国人投資家の売りが大きく影響した。 海外での投資損失をカバーするために日本株が売られた。
特にヘッジファンドや投資信託は投資家からの解約請求が殺到し、それに応じるために保有株を手放すことを余儀なくされた。 こうした外国人投資家の撤退に加えて、日本の投資家も売りが先行する展開となった。
日経平均株価の急速落下に伴って誰もが大幅な含み損を抱えることになり、そのこと自体が彼らの株買い増し余力を制約した。

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